魚沼産コシヒカリはなぜ美味しいのか?
美味しいお米を作る要素である「気候」について調べてみました。
7月上旬、魚沼地方の山間部を車で走っている際に、突如夕立に見舞われ、バケツをひっくり返したような大雨。
突然「シャーッ!」という電気音と共に稲光が横に走り、思わず急ブレーキ!
都内とは明らかに違う雷の音と、稲光の強さと明るさに驚いていると、同行していた地元魚沼の米のソムリエ:富井さんが「ビックリしたでしょ!?魚沼のような山間部では、山が近いことで上昇気流が生まれ、雷が良く発生するんです。でも、この雷や稲妻のおかげで美味しいお米ができるとも言われているんですよ。
稲妻の語源は『稲の夫(つま)』。
古くは夫婦や恋人が互いに相手を呼ぶときは男女関係なく『妻』『夫』とも[つま]と言ったそうです。電光が稲に当たると稲が子をはらむ。つまり電光は『稲のつま』であると考えられていたんです。
気象学的にみても、雷が多いときは降水量や日照が多く、気温も稲の生育に良い条件が揃います。昔の人は、雷が多いと豊作になることを経験的に知っていたんですね。
また、雷が空中に放つ電気によって、空中の窒素が分解され、それを雨が溶かし込んで地上に落ちてくる。するとその土壌は栄養分豊かな土になるので、豊作に大きく寄与するともいわれているんですよ。ほら、『雷』という字は『雨』に『田』と書くでしょう。『稲妻』も『雷』も、本当に意味があっての文字なのかもしれませんね。」
落雷によって、ときには山火事が起きたりしますが、恵みをもたらしてくれる要素でもあるのですね。自然の摂理に改めて感心させられます。
豪雨の山間部を下って、大きな道路に出て一安心すると、今までの雷雨が嘘のように消え去り、快晴の空が戻ってきました。
宿に着くと、慣れない豪雨の中での運転で疲れたのか、バタンキュー…
深夜、あまりの寒さに目が覚め、長袖長ズボンに着替え、掛け布団を羽織って、ようやく寝付けました。
翌朝、その話を富井さんにすると、
「魚沼地方は盆地のため、標高の割には昼夜の寒暖差が激しいのが特徴で、夏は日中30℃まで上がった気温が深夜には10℃台まで下がることもあり、朝霧が立ちこめることも良くあります。
この昼夜の寒暖差こそが魚沼のコシヒカリが美味しいといわれる、最も大きな要因だと私は思っています。
お米に限らず、魚沼地方の農作物はどれもみずみずしく、味が濃くて甘みが強い。これは、日中に光合成が盛んにおこなわれて栄養が作られ、涼しい夜間にその栄養が内部に凝縮されるからだと思います。
この昼夜の寒暖差は全国的にも稀で、魚沼地方は顕著だと思います。」
昼夜の寒暖差が生む、旨みの極み。
魚沼特有の自然環境が、美味しいお米を作り出す重要な要素だと実感しました。